かつて浜通りにはツキノワグマはいないとされていたが、いわき市では今年に入って目撃情報や通報が相次いでいる。特に11月28日の平豊間や、同30日の洋向台三丁目に関しては、市街地を越えた海岸に近い場所で見かけたため、市民の間には驚きが広がった。
洋向台三丁目の件は12月1日、通報現場近くで撮影された足跡の写真から、見間違いの可能性が指摘された。この2件を含め、市環境企画課では「現時点ではクマと確定できる情報はない」と強調しており、引き続きクマに注意しつつ、慎重な対応を求めている。一方でヒグマは北海道にしか生息しないはずが、「四倉地区にヒグマが出ている」など、荒唐無稽(こうとうむけい)と思われる連絡もあり、同課の通常業務に影響を与えている。
市環境企画課には本年度、クマとみられる爪痕や糞(ふん)を見つけたなど、10件超の情報が寄せられている。ただ同課職員が、猟友会員や専門家と現場を精査すると、状況からアライグマやタヌキと推定されたり、クマの足跡や爪痕などが確認できなかったりと、9件で否定や明確な判断見送りとしている。
中には糞ではなく、ゴム製のごみだった事例も。それぞれの調査結果については、市のホームページに掲載している。
いわき3署では市内でクマの目撃通報があった場合、いわき民報社を含む報道各社に対し、概要をまとめた発表を実施する。各署ともに通報内容を踏まえ、万が一の事態を想定していると理解を求める。現場付近でパトカーによる警戒・広報活動を展開したほか、必要に応じて通学路での警戒にも当たった。
問題は別なところにもある。同課には11月以降、クマ関連の電話が連日十数本入っている。「なぜ早く駆除しないのか」「自宅周辺は大丈夫か」といった内容に加え、「(JR常磐線の)泉駅前にツキノワグマがいた」とする話も持ち込まれ、職員は困惑を隠せない。一般の環境行政や公害対策にも支障を来しかねない。
担当者は「もちろんクマがいないとは限らない」と話す。市では入山時に複数人で行動することや、クマが活発な朝夕を控えるよう呼びかけており、遭遇した際には背中を見せず、あわてずそっと立ち去るよう要請している。
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