ひまわり信用金庫四倉支店で開催中の「東京大学安田記念講堂と日の出石展」に合わせ、小泉屋文庫主宰の緑川健さん(四倉町)が本紙に原稿を寄せた。(全文は17日付12面に掲載)
昨年の12月初旬、東京に遺されてるいわき関連の歴史的史跡や石碑の調査取材のため、都内に赴いた。目的地は複数あり、その中のひとつが文京区本郷にある東京大学であった。到着し直ちにキャンパス内にある「大講堂」=大正14(1925)年竣工=についての取材を始めた。ちなみに大講堂は安田財閥の創始者安田善次郎(1838~1921)が匿名の条件による寄付で建設された。
彼の死後それが知れ渡るようになり、善次郎を偲んで一般に「安田講堂」と呼ばれるようになった。その大講堂はいわきと深い関係がある。それは講堂の建材の一部にいわき四倉産の「日の出石」が用いられていることだ。詩人草野心平の縁戚にあたる關内幸介氏によると、心平の祖父である白井遠平(1846~1927)がかかわっているという。
実業家・政治家であった遠平は安田と親交があり、当時二人とも同じ文京区に住んでいたという。遠平は安田が講堂を寄付する計画を聞きつけ、建材に日の出石を提供することを申し出たのではないかと教示いただいた。
東大キャンパス内は一般人も入構でき、気軽に敷地を散策できる。講堂は大学敷地のほぼ中央にあり、シンボル的な建物だった。最初に目に飛び込んできたのは、建物の周りを囲う装飾されたブロックだった。これを見た瞬間思わず息をのんだ。一目で日の出石とわかった。四倉産の石が日本の最高学府の講堂に使われていることに感激した。所々欠損が見られたが、間違いなく日の出石だった。
いわきがかかわる貴重な近代の建物、そして白井遠平と安田善次郎の交流。その象徴が東大安田講堂だ。今回取材を通して、いわきの近代の歴史はとても深く、もっと誇りを持っていいと思った。
そこでこの機会にひまわり信用金庫四倉支店において、「東京大学安田記念講堂と日の出石展」を企画・展示することにした。(会期は1月末まで)。その後、同金庫本店営業部(平祢宜町)において巡回展を開く予定(会期は2月末まで)。安田講堂と日の出石について理解を深めていただければ幸いである。