市消防本部は6日、いわき市の昨年1年間の消防統計(速報値)を発表した。出火件数は67件(前年比4件減)と2年連続で減少しており、1967(昭和42)年の統計開始以来、2020(令和2)年の58件に次いで過去2番目の少なさだった。最も多かったのは74年の237件。
救急出動件数は1万6094件(同657件増)で、過去最高を更新した。一方で覚知から現場に着くまでの「現場到着所要時間」は11分10秒(同33秒減)、医療機関に運ばれるまでを含む「病院収容時間」は52分55秒(同2分26秒)と、いずれも前年を下回った。
出火件数67件の区分で最も多いのは、建物火災の33件で全体の4割超に当たる。死者は6人(前年比1人増)で、うち65歳以上の高齢者は5人(同2人増)と、ほとんどを占めた。
火災の原因は放火(疑い含む)が9件で、たばこの6件、ストーブの4件と続いた。特に放火(疑い含む)は2010(平成22)年から、継続して1番となっており、今年も常磐地区を中心に8件が確認されている。
消防本部では火災からの逃げ遅れを防ぐため、住宅用火災警報器の設置や更新について、積極的に呼びかけている。自力での設置が難しい世帯に対する支援や、助成による配布事業も功を奏し、いわき市では昨年までの5年間で、設置率が4・9ポイント増の84・8%まで上昇した。県の79・8%、国の84・3%を上回っている。
救急出動件数は2年連続で過去最高となった。背景には搬送者のうち、高齢者と熱中症の搬送がいずれもこれまでで最多と、社会情勢や気候の変化が著しい点がある。ただ傷病程度の43%が軽症で、救急車の適正利用が求められている。
そうした中、新型コロナウイルスの感染拡大もあって、全国的に患者の搬送に時間がかかる傾向にあるが、いわき市では現場到着所要時間は過去20年で初めて、病院収容時間は3年ぶりに短縮できた。
担当者は医師搬送や、市医療センターの配備されたドクターカーの運用の実績が積み上がっているほか、市内医療機関との連携が図られたためと指摘する。
またすぐ駆け付けられる救急車を手配する「直近選別方式」や、現場に向かう道中で患者の情報を聞き取る「プレアライバルコール」の運用、小名浜消防署の救急隊増強、職員の訓練充実も後押しした。消防本部では引き続き、病院に早期に向かえる体制づくりを進めると強調している。
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