東日本大震災から13年を迎える中で、当時の写真や動画をインターネット上で公開する「デジタルアーカイブ」が岐路に立っている。運営する人材の確保や維持費の問題から、閉鎖や公開停止となる自治体・団体が増えている。いわき市は、薄磯三丁目のいわき震災伝承みらい館が中心となって展開しており、現時点で公開に支障はないとされるが、持続可能な運用のため、さらなる取り組みが必要とされる。
災害のアーカイブは、1995(平成7)年に阪神・淡路大震災が発生した際、被災の様子を残す必要性から提起されたという。2011年の東日本大震災をきっかけに広がりをみせ、熊本地震などその後の災害でも構築されてきた。
いわき市のデジタルアーカイブは、震災伝承みらい館のホームページで閲覧できる。撮影内容や時期のほか、平や小名浜などの
地区ごとに、写真を絞り込むができる。震災直後や復興に向かう姿に触れられるほか、定点観測として、震災前を含めた写真も掲載されている。
写真の保存もクラウドを利用しているため、大きな維持費は要しないとされる。将来的には語り部による動画などもアップロードする考えを持つが、同館の担当者は「少ない人数で運用しているため、どうしても頻繁な更新作業などは行いにくい」と明かす。
こうしたことに対し、東北大災害科学国際研究所の柴山明寛准教授は「一番は首長の理解。行政が展開する以上、継続して予算や人的リソースを投入する環境が求められる」と指摘する。
アーカイブの第一人者である柴山氏は、今後懸念される大地震への対策を含め、東日本大震災アーカイブプロジェクト「みちのく震録伝」を担当している。いわき市との縁も深く、昨年9月の台風13号に関連した豪雨災害で、災害検証チームの統括を務める。
検索一つとっても、より分かりやすくすべきと話す。「当事者であれば、平や小名浜と言っても場所が分かる。しかし他の土地の人が、いわき市の震災を知ろうとした場合、必要な写真にアクセスする難しさがある」と柴山氏。導入部として、いわき市の東日本大震災とはどのようなものだったか、デジタルアーカイブと一緒に説明する必要があると説いた。
また「震災にとどまらず、これまでの災害を網羅したアーカイブにすることで、次の世代に伝えることができる」とも語る。東日本台風や昨年9月の水害も交えて紹介することで、市民一人一人が当事者意識が持てると呼びかけた。
(画像:いわき市のデジタルアーカイブより)
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