昨年9月の台風13号に関連した大雨に伴い、被害の大きかった内郷内町や内郷宮町で、被害の実態を調査した「検証チーム」は28日、市に最終的なまとめを報告した。
報告書には災害時の情報発信のあり方や、コミュニティーの活性化による共助の充実などが盛り込まれ、内田市長は避難指示の地域・河川ごとの細分化に加え、地域活動に対する補助、浸水を知らせるセンサーの設置、垂直避難が困難な住家のマッピングといった取り組みを進める方針を明らかにした。
検証チームは、東北大災害科学国際研究所の柴山明寛准教授が統括を務め、同大や福島高専の専門家で構成。報告は市役所災害対策本部室で行われ、柴山氏から内田市長に伝えられた。
今回の豪雨は昨年9月8日夜に起き、いわき市に県内初の線状降水帯が発生。宮川や新川があふれた上、下水道の排水能力が追い付かずに内水氾濫も生じた。床上・床下浸水は内郷内町や内郷宮町を中心に、市内で1707棟に上り、内郷内町では避難中とみられる男性1人が死亡した。
最初の避難の呼びかけは、大雨が降る前に出された同日午後3時の警戒レベル3の「高齢者等避難」で、同7時には警戒レベル4の「避難指示」が市内全域に発令されたが、残念ながら市民の動きは鈍かった。雨脚が急激に強まり、最終的に警戒レベル5の「緊急安全確保」に至るも、すでに逃げるには遅い段階となっていた。
柴山氏は、内田市長からメッセージが発信された点は評価しつつ、「細かい情報が載せられておらず、いわき市全域を対象としている点から、市民がわが事と感じられなかった」と指摘。X(旧ツイッター)やフェイスブックでは、写真や画像、エクセル表を活用しながら、市民が情報をキャッチしやすい環境を作るべきとした。
避難が思うように進まなかった件に関しては、新型コロナウイルスの感染拡大によって、住民同士のつながりが希薄になったと説明。自主防災組織の連合・統合も含め、地域活動を高めていく必要性を強調した。
検証チームは4月以降も調査を継続し、住民からの聞き取りを基に、災害対策・復旧復興についての提案に臨む。また内郷地区以外にも足を運び、全市的に課題を確認していく。柴山氏は「引き続き、いわき市の防災に協力していきたい」と力強く語った。
(写真:検証チームとしての報告を行う柴山氏=中央奥)
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