小名浜愛宕町で50年にわたり寝具の製造販売を行ってきた「江尻寝具店」は、元日に石川県を中心に発生した能登半島地震の被災地に、手づくりの座布団508枚を届けた。
店主の江尻健二さん(72)と従業員が、被災者の支援と東日本大震災時の恩返しの思いを込めて作成した縦横約50cmの座布団で、「市シルバーリハビリ体操指導士会」(藤原善子会長)や「いわき地域リハビリテーション広域支援センター」(事務局・かしま病院内)、「特別養護老人ホームはなまる共和国」(平上荒川)などの協力を得て実現した。座布団は被災者支援のほか、集会所での体操で活用されるという。
江尻さんは震災で店舗と、泉町下川のふとん工場が大規模半壊となる被害を受け、一時避難所での生活を余儀なくされた。避難所の床が固く冷たかったことが今でも強く印象に残っており、能登半島地震の報道で当時の避難所生活を思い出し、被災者たちの苦労を我がごとのように感じて心を痛めた。
自分ができることは何か考え、「自分たちが作る座布団でぬくもりを感じて、心を癒してもらいたい」。1月15日から取り掛かり、従業員とともに5カ月間ほどかけて座布団を作り続けた。座布団は手間暇惜しまず、丁寧に、心を込めて、などの意味が込められた東北の方言〝までい〟から、「までい座布団」と名付けた。
「避難者にとって、今が一番気持ちが落ち込む時期だと思っている。大きな被害を受けた私たちもこうして立ち直れたので、この座布団を使って能登の方々にも希望を持ち続けてほしい」と江尻さん。
江尻さんの思いをくみ取り、被災地に赴いた藤原会長は「高齢者の健康に気配りした座布団の支援は珍しかったよう。能登は元々座布団を使う文化が浸透し生活に根付いているので、皆に喜ばれた」と振り返り、座布団で被災者の心が少しでも和らぐことを願った。
(写真:までい座布団を手がけた江尻さん=前列中央=ら)
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