福島高専の布施雅彦准教授(52)は、6月23日付のいわき民報に掲載した記事を通じて、JR東日本が磐越東線・小川郷駅の木造駅舎を解体する方針を示していることを知り、小川町出身の詩人草野心平が愛した駅舎への思いや情景を後世に引き継ぐため、デジタルアーカイブを作成して一般への公開を始めた。
8月の解体に向け、駅舎では市民図書などの撤去が始まっているが、〝在りし日〟の駅舎の情景をそのまま写真、映像データで保存。まるで小川郷駅にいるような視聴体験ができる。
「解体されてからは訪れるのは難しいと思った」。布施准教授は小川町出身の詩人草野心平の詩に登場し、「歴程」に名を連ねた詩人で評論家の藤島宇内、文学者の野上彰も利用したとされる、文学的価値の高い駅舎の解体を本紙を通じて知り、居ても立っても居られずデジタルアーカイブの制作に取り掛かった。
専門は教育工学とeラーニング。廃校となった旧田人二小のデジタルアーカイブや、コロナ禍によるステイホームのストレス軽減を図るため、いわき芸術文化交流館「アリオス」が公開した館内360度VR(仮想現実)ツアーの映像を制作してきた実績から、小川郷駅の作品を制作するのは〝お手の物〟だ。
デジタルツイン技術で有名なMatterport(マターポート)版と全円周360度映像の2通りがあり、専用のVRゴーグルで視聴体験すると、実際に駅を訪れているかのような錯覚に陥るほどの出来栄えとなった。
心平の詩「故郷の入り口」「小川の歌」のパネルなど、地下通路の展示物やプラットホームの情景も閲覧できるほか、駅に入ってくる臨場感あふれる電車の動画も見ることができる。詳しくは<こちら>まで。
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