いわき市や茨城県でスーパーマーケットを展開する「マルト」(本社・勿来町窪田、安島浩代表取締役社長)は、2027(令和9)年度、双葉郡大熊町に新しい店舗をオープンする方針を固めた。
同町は東京電力福島第一原発事故による避難指示の解除を受け、住民の帰還や新たな移住が進む中、復興の加速化に向けた公設民営による商業施設の整備を計画し、出店者を募集した。複数の事業者が名乗りを上げ、企画競争によるプロポーザル審査によって、マルトが優先交渉権者に決まった。マルトの双葉郡進出は初めて。
福島第一原発が立地する同町は2019(平成31)年4月、原発事故による全町避難を経て、町西部の大川原、中屋敷地区の避難指示が解除され、役場本庁舎は大川原地区に置かれた。
2022(令和4)年6月には帰還困難区域のうち、先行して除染やインフラ整備を進める特定復興再生拠点区域(復興拠点)として、JR大野駅周辺の避難指示も解除。昨年4月には、認定こども園を併設する町立義務教育学校「学び舎 ゆめの森」が開校した。
同町の人口は9980人(6月末現在)。うち町内居住者数は790人で、住民登録がない人を含めると1279人が住んでいるという。一方でいわき市には県内最多の4358人が避難する。
住民からは買い物環境の改善を求める声が上がっており、さらなる帰還や移住を実現するため、こうした意見に応えようと、同町では青果・精肉・鮮魚を中心に各種食品と、医薬品類や酒類、衛生用品、日用品を取り扱う出店者を募った。
マルトが出店するのは、大熊町下野上字原の復興拠点に立つ「大熊町原地区商業施設用地」で、JR大野駅から南西に約1km、常磐道大熊IC(インターチェンジ)から南東に約1・7kmに位置する。町営住宅や、企業集積を目指した産業団地「大熊中央産業拠点」が近接している。
敷地は広さ約1万平方mの町有地で、売り場面積は最大で1200平方m程度を想定。町では営業時間は午前9時半~午後8時、休業日は設備点検日等のみが基本などの条件を出し、審査結果は17日付で通知した。
マルトは8月9日までに、同町と覚書を交わす予定。出店担当者は「これまでいわき市の復興に取り組んできたが、さらなる力添えができればと手を挙げた。マルトは薬や衣料品の部門もあり、大熊町の皆さんのニーズに応えていきたい」と語る。当面の需要は限定的だが、将来的な人口増を支えていきたいとも意気込む。
商業施設を管轄する同町産業振興係では、特に住民がまとまって生鮮食品を購入するには隣接する富岡町まで行く必要があるため、マルトの進出を歓迎している。
(写真:マルトが出店予定の大熊町の復興拠点に立つ商業施設用地)
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