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「いわきでそばの一貫生産を」東京出身で脱サラして起業 今井賢治さん

 好間町大利の約4haの農地が一面のそば畑になり、今夏、一面の白い花が咲いた。高原山地のようなさわやかな風景もつかの間、梅雨明けから今シーズン最後の収穫が〝まったなし〟の状態。2人の男性が猛暑のなか、連日作業に追われている。
 合同会社「丹沢そば福島いわき」代表の今井賢治さん(59)=平=と、従業員の武田光生さん(47)=同=。いわきでまだ見ぬそばの一貫生産を夢見て、作業に汗している。
 今井さんは東京都出身。仕事で知り合った武田さんを誘い、「脱サラ」して2022(令和4)年9月に会社を立ち上げた。人生初の農業にチャレンジ中で、多忙な収穫期も「農業で食べられるなら、こんなに幸せなことないと思う」と充実感をにじませる。
 もともとは会社員で、好間工業団地にある工場に管理者として赴任したのがはじまり。単身8年、いわきで過ごし、帰京のタイミングになったとき、「ここに住んで新しいビジネスをしたい」と、思い切って会社を退職した。
 ビジネスのアイデアをくれたのは、神奈川の親せき「石庄丹沢そば茶屋本舗」代表の石井勝孝さん。都内からファンが押し寄せる有名店で、石井さんは「秦野のそば」の生産・加工の技術が認められ、日本特産農産物協会の地域特産マイスターに選出された。
 そば店主からさらなる高みを求めて生産を始めた生粋のそば職人だ。石井さんが運営する「丹沢そば農業アカデミー」に入門し、そばの栽培技術を学んだ。
 石井さんから「いわきなら神奈川と同じ三期作もできるよ」とお墨付をもらい、市の農業委員会に相談して四倉や平窪に耕作放棄地など計7haを借りた。「最初は『都会から来てすぐ帰ってしまうのだろう』と思われ、信用されなかったけど日常的に作業に通ううち、『こっちも借りてほしい』と声がかかるようになった」という。
 現在は作付面積が10haに増え、「二人では作業が間に合わないほど」だという。あえて二期と三期のそば畑をつくり、栽培時期をずらしながら、収穫期を乗り切っている。まだ加工機械を持たないため、生産したそばは実のまま神奈川に送り、乾麺に加工してもらっている。市内では道の駅よつくらとJA直売所新鮮やさい館好間店の2カ所で取り扱っている。
 会社立ち上げから2年。武田さんと2人で何度も収穫の繁忙期を乗り切ってきた。「10年以上いわきに住んで、一番の魅力は『人』だと思うんです。温かく迎えてもらってると思いますし、嫌な思いをしたことがない土地です」と話す今井さん。「いずれは古民家でそば店を開き、いわきの人に新そばの味を味わってもらいたい」と夢を追いかけている。
 (写真:そばの実を収穫する今井さん=左=と武田さん)

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