新盆の家々を巡り、鎮魂の踊りを奉納する「じゃんがら念仏踊り」。いわき地方の夏の風物詩として親しまれている郷土芸能で、近年は後継者不足により存続の危機に直面する団体も少なくないが、四倉町の内陸部にある駒込地区ではこの夏、15年ぶりに地元のじゃんがら保存会に中学生ふたりが参加した。四倉中1年の杉山想空(そら)、金成優花さん=ともに12歳=。「次代の担い手」として地域住民の期待を集めている。
駒込地区では2021(令和3)年に地元の大野二小が大浦小と統合して閉校し、昨年3月には大野中も閉校を余儀なくされるなど、少子高齢化が進む。保存会の会員は現在10人ほどで、お盆が近づくとOBが助っ人として駆け付けるが、若い世代の担い手不足が深刻化。
「じゃんがら念仏踊りが途絶えてしまったら、さらに駒込地区がさびれてしまう」と佐藤貴之会長(45)が危機感を募らせる中、杉山、金成さんが加わることになったのは明るい話題となった。
ふたりとも大野二小の閉校後は大浦小に通い、杉山さんは4年生から3年間、金成さんは6年生の1年間、「上仁井田子どもじゃんがら」に在籍していた。進学とともに卒業はしたが、保存会のメンバーでもある父親からの誘いを受け、15年ぶりに中学生メンバーが仲間入りすることに。
ゼロから指導する必要もなく、佐藤会長は「若い世代が入ってくれただけでも大歓迎。しかも、じゃんがらの基本的なことは身に付けていたので心強かった」と、〝即戦力〟の加入を喜んだ。
ふたりはデビューに向け、7月から練習に打ち込んできた。駒込のじゃんがら保存会と上仁井田の子どもじゃんがらでは、踊りの所作や歌詞に異なる箇所があったものの、「鉦が(上仁井田よりも)ちょっと重いかなと思ったくらい」(金成さん)と、それほど戸惑いを感じることもなく、習得していった。
今夏は、保存会とそのOB合わせて12人のメンバーと一緒に、13、14の両日で12軒の新盆回りをこなした。14日の夕刻、練習場所にもなっている地元の妙音寺での最後の奉納でも、ふたりは堂々とした鉦と踊りを披露し、見守った住民からは大きな拍手が沸き起こった。
奉納のあと「これからもじゃんがらを続けていきたいです」と声をそろえたふたりを、保存会のメンバーや住民たちは頼もしそうに、温かく見守っていた。
(写真:踊りを披露する杉山さん=右、金成さん=左)
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