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【海洋放出1年】問題ない状況継続を 「常磐もの」風評払しょくから次の段階へ
東京電力福島第一原発の汚染水を浄化した後の処理水を巡り、海洋放出は風評被害を招くとの声があったが、実際には水産物の応援消費が熱を帯び、いわき市の「常磐もの」も多くの支持を集めた。25日には通算8回目の海洋放出を終え、新たに約7900tの処理水が海に流されたが、海洋モニタリングでは異常は確認されていない。いま求められているのは、この問題がない状況が継続することだ。
いわき市のふるさと納税は、海洋放出をきっかけに大きく伸びた。もともと水産物は人気の返礼品とあって、2023(令和5)年度の寄付額は9億1799万7千円と、前年比67・3%増で、過去最高を記録した。特に海洋放出が始まった昨年8月24日から、9月末でのおよそ1カ月間には、前年と比較した1日当たりの寄付額は13倍、件数は15倍を超えた。
その後は落ち着きを取り戻したが、市創生推進課の担当者は「変わらず多くの方に応援頂いている。初めていわき市にふるさと納税をした方も多かったと思うので、これをきっかけによりいわき市の魅力を知ってもらいたい。そしてぜひいわき市に足を運んでもらいたい」と話す。
こうした中で、内田市長は地元の首長として、全国の応援に重ねて謝意を示した上で、次の段階に入る重要性を強調する。「いつまでも風評払しょくを呼びかけるキャンペーンをするのではなく、少しずつ平常に戻していくべきではないか。そして応援頂いている声を、さらなる発信・PRにつなげていきたい」
純粋に「常磐もの」のおいしさで、全国の水産物と肩を並べてほしいとの思いをにじませる。もちろん東電に対しては、トラブルがないようにと釘をさす。ひとたび問題が起きれば、一連の動きは水泡に帰してしまう。
現に福島第一原発では22日に溶け落ちた燃料(デブリ)の試験的取り出し作業が始まる予定だったが、設備にミスが見つかって中断して再開は見通せておらず、不安を呼んでいる。海洋放出は緒に就いたばかり。東電は廃炉完了のメドである2051年までに、処理水の放出を終える予定を立てる。漁業者や消費者の厳しいまなざしを肝に銘じてほしい。(報道部主任・馬目真悟)=おわり
(写真:ふるさと納税で人気の常磐もの=ふるさとチョイスホームページより)