東日本大震災から間もなく14年を迎える中、市は津波で家屋などから流出し、持ち主不明となっている写真やアルバム、バッグ、位牌といった「思い出の品」(津波遺留品)について、今年3月をもって一部を除いて処分する。
最後の展示・返還事業は10日から、薄磯三丁目のいわき震災伝承みらい館で行われる。震災から時間が経過するごとに引き取りが少なくっている現状に加え、思い出の品の劣化が進んでいることから決断した。
2011(平成23)年3月の震災を受け、津波で生じたがれきの撤去に合わせ、市内の沿岸部では同年6月にかけて、思い出の品の回収を進めた。12年までの2カ年に各地区ごとに展示・返還会を開き、多くが元の持ち主のもとへ返った。
引き渡しがかなわなかった品に関しては、市有施設での保管を経て、20(令和2)年に供用を開始したいわき震災伝承みらいに移管。リスト化とともに、22、23年に展示・返還の機会を設けると、新たに約50点の受け取りがあった。
現在の思い出の品は約5千点で、全体の3割には所有者情報が記載されている。同館によると、写真が35%を占め、ランドセルや賞状、トロフィーなどもあるという。
最後の展示・返還事業は2月28日まで。午前9時~午後4時半。休館日は月曜日(祝日の場合は次の平日)。専用のタブレットでデータベース検索できるほか、カタログ化したものを閲覧可。返還の際には、運転免許証などの本人確認を必要とする。
事業終了後も残った品は、3月11日に平薄磯の修徳院でお焚(た)き上げする。同日は午後2時ごろから、薄磯区の慰霊法要と併せて催し、誰でも参加することができる。写真は可能な限りデータで保存し、引き続き提供する予定。
津波遺留品を巡っては、環境省が「一定期間を経過した思い出の品等については被災地方公共団体の判断で処分する」との指針を出しており、地元からは市の判断を尊重する意見が聞かれた。
震災当日は自宅で津波にのまれ、現在は同館で語り部として活動する平豊間の小野陽洋さん(34)は「どこかで区切りをつける必要はある。こうした品々が貴重な存在である一方、いまを生きることも大切ではないか」と呼びかけた。
(写真:いわき震災伝承みらい館に展示されているランドセルなど「思い出の品」)
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