大規模な自然災害が発生した際、行政がすべての被災者を迅速に支援するには限界があり(公助の限界)、「自助」や「共助」による「ソフトパワー」を効果的に活用することが求められている。
17日で阪神・淡路大震災から30年の節目を迎え、南海トラフ地震を想定した備えが求められるなか、勿来・窪田地区では東日本大震災や相次ぐ水害を教訓にし、住民たちが主体となって民間の施設と緊急時の避難所として駐車場を借り受ける覚書を結ぶなど、市内初となる独自の取り組みを展開。地域で手を取り合い、命を守る共助の意識が高まりつつある。
覚書を結んだのは、窪田地区振興会と、認定こども園なこそ幼稚園、五浦庭園カントリークラブを運営する株式会社勿来。同振興会は有識者や行政区長でつくる地域団体で、住民の声を行政に届けたり、独自に地域と連携して環境美化や講演、懇談会などを実施している。
現会長を務める赤津金一さん(73)は元消防署員で、定年退職を目前とした勿来消防署時代に東日本大震災に遭遇し、市民の避難誘導や津波被災地区での行方不明者の捜索、東京電力福島第一原子力発電所事故の対応などの陣頭指揮を努めた経歴を持ち、その豊富な経験と知見から、近年、全国各地で相次ぐ地震や豪雨災害を危ぐした。
窪田では地区を横切るように蛭田川が流れているが、堤防より低地にある市街地の勿来高、勿来公民館が避難所に指定されており、洪水時に陸橋をこえる(約50世帯が対象)、または河川がはん濫した際に同校と同館に避難するリスクに配慮し、赤津さんは「地震の際は有効だが、豪雨災害の場合は緩やかな高台にある指定避難所の勿来一小に足を運ぶことが正しい判断」と訴える。
ただ、前述のとおり避難が1カ所に集中すると混乱が起きる可能性も。蛭田川の陸橋をこえるリスクを冒さず高台に避難できる場所はないか、と会役員らと協議を重ね、同校の裏手に位置するなこそ幼稚園と、蛭田川南側(北茨城方面)の高台に位置する五浦庭園CCに相談を持ち掛けたところ、両者は共助の精神を前提に地域のためにと、快く引き受けてくれた。
赤津さんは「大切な財産でもある車を安全な場所に置けるのは大変ありがたい」と、両者の決断に感謝する。
(写真:覚書を前に共助の必要性を説明する赤津さん)
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