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森林残存セシウム 生活圏に流出せず定着 いわきアリオスでJAEAの成果報告会
日本原子力研究開発機構(JAEA)による「令和6年度 福島廃炉安全工学研究所 成果報告会」は1月31日、いわき芸術文化交流館「アリオス」で開かれた。東京電力福島第一原発事故からの復興と確実な廃炉に向け、原子力災害からの環境回復、溶け落ちた燃料(デブリ)の取り出し、原発処理水と放射性廃棄物のあり方をテーマに、JAEAをはじめとする専門家がこれまでの取り組みを示した。
環境回復のうち、JAEA廃炉環境国際共同研究センターの飯島和毅研究主席は、原発事故から13年にわたる福島の環境を取り戻すための活動を発表した。
環境動態研究として、森林に残る放射性セシウムが生活圏に流出する懸念について調査し、農作物や飲料水に影響を与えないことを確認。ただ森林の地表から6cmの表土に80%以上のセシウムが存在し、深部への移行も極めて遅いため、そのまま定着するとも指摘し、キノコや一部の渓流魚の濃度がいまだに高いことにつながっている可能性を挙げた。
今後も地表付近に残存する放射性セシウムが生態系に対し、どのような過程で影響を及ぼすか明らかにしていくと説明。その上で森林に隣接する生活圏を念頭にしながら、原発事故に伴う帰還困難区域の避難指示解除につなげていければと述べた。
会場では研究成果をまとめたポスターセッションも行われ、JAEAの担当者と来場者が意見交換したほか、四足歩行ロボット「Spot(スポット)」や無人航空機(ドローン)などが展示された。
(写真:福島の環境回復に関する講話)