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いわき地方最大の水害「えびす講の大水」伝える掛け軸 会津の佐藤さんが市に寄贈
1922(大正11)年2月、浜通り全域が暴風雨に見舞われ、いまのいわき市と双葉郡を中心に死者184人、行方不明者35人を出した、いわき地方の歴史上最大規模の水害「えびす講の大水」。
会津若松市在住のアートディレクター佐瀬勉さん(73)が、当時の被害状況を七言絶句の漢詩で記した掛け軸を市に寄贈した。石城郡長などを歴任し、若松市長を務めた祖父の佐瀬剛氏の代から伝わる貴重な資料だ。
市では今後、東日本台風や、一昨年9月に発生した台風13号に伴う線状降水帯による水害など、甚大化する自然災害への備えとして、出前講座などによる水害予防の啓発に活用していく。
水害は1922年2月16日夜から17日明け方にかけて発生し、特に夏井川沿岸に甚大な被害を与え、いわき地方では152人が亡くなり、行方不明者は23人を数えた。
また負傷者数は13人、全壊住宅は220戸、半壊が525戸、流失が106棟で、道路や橋、田畑の浸水などの被害も相次いだ。旧暦20日のえびす講の夜だったことから「えびす講の大水」と呼ばれ、被害は明治以降としては最大規模といい、昭和初期に同河川などの改修が行われるきっかけとなった。
今回寄贈を受けた漢詩には当時の状況が分かり、手掛けたのは1910(明治43)年から大正天皇の侍従を務めた詩人の落合東郭(とうかく)=1866~1942=。
東郭は水害の報を受けて石城郡に派遣され、現地の惨状を目の当たりにしたことから、当時郡長を務めていた佐瀬剛氏に水害対策を訴えようと掛け軸を送り、これが後の夏井川などの河川改修につながったとされている。
佐瀬さんは今年4月、会津若松市の国登録有形文化財「福西本店」の店蔵に展示する昭和の書の発掘作業を進めるなか、100本近い掛け軸を同店顧問で店蔵展示コーディネーターの吉田孝さん(71)に鑑定してもらったところ、寄贈した掛け軸を発見した。
吉田さんと相談し、いわき市にゆかりのある内容であることから、今回寄贈することを決めたという。寄贈式は19日、市役所本庁舎で行われた。
(写真:市に寄贈された水害にまつわる掛け軸)