無骨な鉄を素材に、“鉄の彫刻家”として詩情豊かな世界を表現している安斉重夫さん(76)。安斉さんが宮沢賢治(1896〜1933)の世界観をテーマに制作する一連の作品からこのほど、新作絵本『セロ弾きのゴーシュ』が誕生した。
東日本大震災後の2012(平成24)年に始まった絵本三部作で、同年に『どんぐりと山猫』、一昨年に『注文の多い料理店』を出版し、3冊目となる今作が最後となる。15日まで岩手県一関市にある「石と賢治のミュージアム」で本作にちなんだ作品展が開催されている。
安斉さんは福島市生まれの元高校教師。同じく元教員の妻タツ子さん(75)も賢治関連の書籍、資料を網羅する熱心な賢治ファンで、ともに宮沢賢治学会員だ。賢治のふるさと花巻市とも縁が深く、現在は夫婦で「いわき賢治の会」の運営に携わっている。
安斉さんは2009年、賢治生誕100年記念として岩手県盛岡市で個展を開催したのをきっかけに現地で評価が高まり、翌10年には同県花巻市の宮沢賢治イーハトーブ館で1年間にわたって作品を展示した。
11年には宮沢賢治学会イーハトーブ賞奨励賞を受賞し、副賞の賞金をもとにシリーズ1作目『どんぐりと山猫』を2千部出版。そのうち千部は東日本大震災の津波で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島の海沿いの市町村に贈呈した。
絵本は税込2千円で、市内では鹿島ブックセンター等の書店で販売しているほか、安斉さんの個展会場で展示販売する。安斉さんは「絵本で彫刻をより身近に感じてほしい」と話している。
(写真:安斉重夫さんと絵本の編集に携わった妻・タツ子さん)
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鉄の彫刻家・安斉重夫さん 新作絵本『セロ弾きのゴーシュ』手がける







