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吉野せい賞 2年ぶりに正賞なし 準賞には平成の良川さん選ばれる

 小名浜出身の作家・吉野せい(1899~1977)を顕彰し、いわき市の文化振興を図る狙いで設けられた「吉野せい賞」の第48回受賞作が7日に発表され、2年ぶりに正賞(吉野せい賞)の該当作はなかった。
 準賞には無職良川十鵜(とおう)さん(56)=平成=の創作(小説)「凪(な)ぐ」が選ばれた。吉野せい賞選考委員会の鈴木英司委員長が同日、市役所本庁舎で会見して結果を明らかにした。
 表彰式は11月1日午後1時から、小川町の市立草野心平記念文学館で行われる。
 吉野せい賞は1978(昭和53)年から始まった文学賞で、今年は前年より1編多い32編が寄せられた。ジャンル別では小説26編、戯曲1編、ノンフィクション5編。一次選考で吉野せい賞対象に10編、青少年特別賞対象に1編を選出し、各賞を決定した。
 良川さんの「凪ぐ」は、かつて自分の過ちで命を落としてしまった弟といとこと向き合う富次が主人公。選考委員からは、魂の救済を暗示するラストシーンが印象的とし、言葉の立ち上がりや読後感に対して好印象を抱いたという。
 受賞にあたり、「奨励賞受賞から3度目の挑戦で、準賞に選ばれました。大変光栄に思っております。今後も小説というものからさまざまなことを学び、また探求を怠ることなく、地道に、着実に書いていきたいと思います」と話している。
 「凪ぐ」は総合文藝誌「風舎 第20号」(来年3月発行予定)に掲載する見込み。
 準賞のほか、奨励賞には無職伊関鉄也さん(65)=会津若松市=の創作(小説)「ファミリー(The Family)、歯科医師・中山孔壹(こういち)さん(65)=小名浜=の同「未完の魂」、磐城桜が丘高2年・渡部綾音さん(17)=平成=の同「くぐる」、青少年特別賞には東日大昌平中2年・小林礼依さん(14)=平=の同「ステップ」が選ばれた。
 会見に同席した吉田隆治・選考委員(いわき地域学會相談役)によると、委員4人の選考で吉野せい賞は決まらず該当作なしとなった一方、青少年特別賞は満場一致だった。
 (写真:各賞の受賞者)

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