いわきFC
「ふるさとに誇りを」いわきFCスタッフ・舘野さん 遠野小・中校章制作
いわき市南西部の中山間地に位置する「遠野地区」。地域の2つの小学校と中学校がそれぞれ統合し、今春から遠野小と遠野中が誕生した。新たな学びやを彩る校章は小・中共通となっており、サッカー・J2いわきFCのスタッフで、マーケティング&ファンエンゲージメント クリエイティブリーダーの舘野隼平さん(32)が手がけた。山と緑に囲まれた様子を優しく伝えている。
「子どもたちには若葉のように大きく育ち、ふるさと・遠野、そしていわきに誇りを持ってほしい」。Jリーグクラブが地元の校章に携わることは珍しいが、そこにはいわきFCの地域連携に対する思いがにじむ。
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東京都出身の舘野さんは大学時代にデザインを学び、2018(平成30)年にいわきFCの運営会社・いわきスポーツクラブに入社。主にチームのグラフィックを担当し、販促物やSNSをはじめさまざまなロゴやデザインを取り仕切っている。
サポーターの間では、マスコットキャラクター・ハーマー&ドリーを描いた動画で広報役を務めていることでも知られる。特に2022(令和4)年に公開された「謎の卵を孵化させろ」では、大久川で発掘した卵を選手や他のスタッフから守る姿をコミカルに表現した。
舘野さんが校章の依頼を受けたのは昨夏。旧知の商工関係者から「校長先生から校章を作れる人はいないかと言われている」と打診された。パートナー企業からの相談で、部門のロゴを制作した経験はあったものの、最初は正直できるか不安だった。しかし一念発起して引き受けることを決めた。
まずはイメージを深めるため、教職員が校章に求める要素や、子どもたちから上がった意見をまとめた。自ら遠野地区を車で走り、五感で里山の息吹に触れた。「遠野に行った瞬間、山々に囲まれた風景が目に飛び込んだ」と舘野さん。シーズン中で多忙を極めたが、少しずつ意匠が固まっていった。
完成を目指す中で、大切にした言葉がある。遠野小・中の学校経営・運営ビジョンで一番最初に掲げられている「小中9年間を通して、ふるさと『遠野』ふるさと『いわき』に誇りを持ち、夢に向かって学び続ける子どもの育成」だ。
校章に据えた「遠」の文字はあえて直線的に構成することで、「未来に向かってて力強くまっすく進んでいる」(舘野さん)。また統合前の上遠野と入遠野から「上」と「入」のモチーフを重ねた。
できあがった校章は、長く子どもたちの成長を見守っていく。「こうした仕事ができる機会は少ない。本当に光栄の一言に尽きる」と胸を張る。「ぜひ校章に愛着を持ってほしい。そして校章をきっかけに、いわきFCも好きになってもらえれば」と優しくほほえんだ。
(写真:校章に込めた思いを語る舘野さん)