いわき短大学長を務め、清水次郎長の伝記「東海遊侠伝」を書いた元磐城平藩士天田愚庵研究者としても知られる故中柴光泰さんの詩に『つまらないからよせ』という作品があることを最近知った▼「爆弾をつくるよりも/田をつくれ/それとも/詩をつくれ(中略)田にはくらしがある/詩にはいのちがある/しかし原爆には何もない/ただ限りなく/つまらないだけだ」▼中柴さんは非核のメッセージを、この詩に託した。爆弾(核兵器)からは1粒の米も、収穫の喜びも生まれてこない。ただ一瞬にして、多くの貴い人命と豊かな恵みを与えたまう自然を奪うだけだ、と▼〝爆弾〟を〝原発〟に置き換えてみたらどうだろう。もちろん原発は豊かな電力の源で、それによって社会が栄えたのは事実。しかし、今回の事故でわれわれは多くの被害を受けた。くらしの礎だった古里に原発が建ち、その結果、一瞬にして田も畑も家も失った。中柴さんの詩をかみしめたい。