「自ら」と「自ずから」は違うという。若者に対し、考えることの大切さを示した『14歳からの哲学』の著者池田晶子の言葉だ。同著をより柔らかくエッセー風にまとめた『14歳の君へ』に出てくる▼「自ら」は自分の意思でどうこうしようとすることで、「自ずから」は自然にそういうふうになることを指す。彼女によると、自ら自分らしくなろうとすることが、自分を自分らしくなくしているという。そして若い人へ「人は自ずからそうなる人になればいい。そうしたら、必ず個性的な人になれる」と説いたのだ▼別の著書ではこうも言った。「自分にこだわり過ぎるな。〝自分の〟人生など、そんなものは何でもないと、一度腹をくくってみるといい。そうすると見えてくるものがある」▼46歳で没して8年。こうした言葉をまとめた『幸福に死ぬための哲学・池田晶子の言葉』が先日、刊行された。考えることの面白さを追究した彼女のエッセンスのような1冊だった。