オウム真理教による地下鉄サリン事件が発生した平成7年、所用でJR水戸駅に赴いた。事件から日はたっておらず、駅構内、建物周辺はものものしい警備態勢が敷かれていた▼こちらは届け物にやや大きめの手荷物を持っていた。下車後、行き先確認に手間取り、いったん歩みかけた方向から踵を返した。その瞬間、鋭い視線を投げかける警官に気づいた。「ああ、これは不審者に思われたか」▼それでも、正々堂々と彼の前を素通りした。「何なら中身調べてもいいですよ」と思いながら。先日、走行中の東海道新幹線内で発生した男による焼身自殺。女性1人が犠牲になったほか、多くの乗客らが多大な迷惑をこうむった▼安全安心、正確さをもって世界に誇る日本の公共交通機関。まずは再発防止だが、全国各駅で空港なみに所持品検査を徹底するわけにもいくまい。警備強化も必要と思うが、自分に注がれた〝あの視線〟は気分のいいものではない。