自分の記憶の不確かさに気づくことがある。覚えたと確信した事柄が日がたつとあいまいになっている、といったようなケースだ▼が、5年前の震災後の出来事は、日にちや詳細まで今も正確に覚えている。強烈な体験だったと同時に、以後幾度も他人に語ってきたせいだと思う▼同様の例だが、幼いころ「国民学校世代」の母に戦中の話を繰り返し聞かされた。多くは、銃後の生活がいかに大変だったかというものだった。平が空襲を受けた際に、隣家の屋根が焼けたという話もあった。当時は昔話として受け取っていただけだが今になり、体験を語り続けることで、下の世代に歴史が伝わることを実感し、その重要さをかみ締めている▼戦地を知る人は90歳を超え、かろうじて終戦時を覚えている人も70代後半という時代になった。戦争体験をじかに聞ける最後の時は近い。そして私たちには、聞いた話をさらに未来へつなぐ役目があると肝に銘じる。今日、終戦の日。
片隅抄