昔、よく聞いた井上陽水さんの曲に「能古島の片思い」がある。アルバム・センチメンタルに収録されていたが当時、この読み方が分からず、のちに「のこのしま」と知った▼軽快かつ、どことなくもの悲しいメロディーが好きだった。さて、福岡県福岡市にあるこの島で作家檀一雄が晩年を過ごしたという。これも後年得た話。その娘さんで女優・エッセイストの檀ふみさんが10月15日、市立草野心平記念文学館に来る▼「文芸トーク『心平さんと父 檀一雄』」と題し、講演会を行う。無頼派と呼ばれ、戦後の文壇に一時代を築いた檀一雄。熱心な読者ではないが酒肴、家庭料理のレシピを紹介した『檀流クッキング』は何度も読み返した▼詩人と作家の交流はよく知らないが、仲良く風呂に入っている写真を見たことがある。互いに酒をたしなみ、料理には一家言持つ2人。どのような交友関係が聞けるか楽しみでもある。聴講希望者は申し込みが必要。