母子草、そういう名の植物があることを、知ってはいた。しかし、それ以上に頓着することもなく、長年過ごしてきた。が、先日、ふとどんな植物か気になり調べてみた▼何と、春によく道端や庭の隅で見かけていた黄色い花を咲かせる植物だった。こんなに身近な植物だったのかと、拍子抜けした。さらに別名はゴギョウ(御形)、春の七草の1つだ。古くは、草もちの材料などにもされていたそうだ▼小さな黄色の花がつぶつぶになってかたまって咲く姿は、特段目立つこともなく、バラなどと違って、はっとする美しさを感じることはないかもしれない。しかしそのさりげなさが、常に一途に子を思い寄り添う母親と、その母を心から慕う子のイメージにぴったりの花でもある。名前の由来も、母子の人形に似た姿をしているからとも▼そして花言葉は「いつも思っています」「優しい人」。まさに母心、母の姿が思い浮かぶ。「老いて尚なつかしき名の母子草」(高浜虚子)
片隅抄