大学野球で活躍した選手たちの進路が載った記事で、久しぶりに草野中出身楠研次郎君の名前を見た。大ブレークした西武の山川穂高、多和田真三郎両選手を輩出した北東北大学野球連盟の雄・富士大で今季、主将を務めた男だ。大震災が起きたときは楢葉中2年生。原発事故で故郷を追われ、最後の中学生活をいわき市で過ごした▼彼に初めて会ったのは、被災地支援で全国からグラブやバットなどの野球用品が寄せられた会場。中学最後のシーズン、〝全中〟出場の夢を壊されたつらい避難生活で覇気を失った表情が印象的だった。しかしその後、軟式から硬式に転向し、東海大相模では夏の甲子園で活躍を見せた▼全日本大学野球選手権準優勝の富士大で1年からレギュラー。7季連続ベストナイン、リーグ10連覇の今秋はMVPと首位打者に輝いた。リーグ2人目の100安打も記録した逸材だが、プロ志望届は出さず、社会人に進む。これからも活躍を見守りたい。