カリスマ経営者から一転、逮捕された日産前会長カルロス・ゴーン容疑者。逮捕容疑は金融商品取引法違反という堅いものだが、要するに所得申告に虚偽があったということ▼庶民には目がくらむような大金を得ながらも「もっと欲しい」「まだまだ欲しい」と法人と個人の区別もなく流用を疑われる件など、底知れぬ金銭欲にまみれたようだ。しかしながら持たざる者の嫉妬だろうか、守銭奴と称し人間性をやり玉に挙げている▼故立川談志師匠の名言に「落語は人間の業の肯定」がある。世間一般では、この前会長の所業は犯罪以外の何物でもないが、金銭の不要な人はおそらくいまい。古典落語には一獲千金を得ようと死人の腹から金銀を掻きだす噺もある▼誰しも大金は欲しいが、その手段はそうざらにはなく、小金欲しさに悪事に手を染めることもある。ただ公人となれば、収支の公明正大さが必要。少しのつまずきが明暗を分けることは歴史が証明している。