かつて田畑だったところが次々と新興住宅地に変わりつつあるわが集落の春の例大祭が14日、行われた▼神輿を先導する猿田彦の衣装(ボロ着のような状態だった)が数十年ぶりに新調されたという明るい話題はあったが、神輿の渡御がとうとう全行程にわたり車に載せるという深刻な状況になった▼神輿を担ぐのは6人ほどで、約1時間半かけて家々や水田地帯を回る。しかし少子高齢化が年々進み、担ぎ手が減少。頼みの綱だった消防団員も祭りに顔を出さなくなって、昨年は家がない〝水田地帯に限って〟初めて軽トラに載せて運んだのだが、今年は最悪のケースになった▼神輿渡御では太鼓とともに横笛担当もいるのだが、現役で吹けるのはただ1人。祝いの『高砂』など祭りに欠かせない謡も、正式に歌える人は高齢の2、3人にすぎない。人材不足で神輿渡御をやめた隣の集落のようになってしまうのか。伝統の継承が危機的な中で、集落は新しい時代を迎える。
片隅抄