奈良の古寺巡りから物語が展開する松本清張原作『球形の荒野』。発端は、第二次大戦中に死亡したとされる外交官が芳名帳に記した独特の筆文字だった▼偽名ながら高名な書家の字体を模した筆跡にぴんときた元陸軍武官が彼を売国奴として付け狙う。さて事件のきっかけになった芳名帳、身近では結婚披露宴の会場受付に置かれていたが、現在ではカード式が主流のようだ▼取材でよく見るのは、ギャラリーでの個展。すすめられるまま書く場合があるが、何となく気が引ける。「書」は年を経てから始めても上達するというが、日々の修練があってのこと。若い時分、書に親しむことが一番の早道かもしれない▼今月29日、勿来の関公園「吹風殿」で第1回市小・中学生書き初め大会が開かれる。主催の市公園緑地観光公社は、参加者を募集中。大勢の中で心を落ち着けての書き初めはいい経験だろう。当日行われる高校生のデモンストレーションにも興味がある。
片隅抄