人間とはこんなにも無力な存在だったのか。本欄にそう記したのは地震直後の2週間前。そして今「人間とはこんなにたくましい存在だったのか」と痛感している▼被災し避難所で寝起きしながら職場に向かう人、被災者支援に昼夜を問わず身を削って活動する人…など、商店は閉じ交通網が寸断されている中で、それでも生きていこうとする人間のエネルギーを各所に感じることができる▼なのに、まず最初に見えてこなければならないはずの「姿」が一向に見えてこないのはなぜだろう。国家行政の最高機関の代表者の「姿」だ。会見は官房長官ばかり。海外ネット上では「日本はまた国のリーダーが変わったらしい。今度は枝野という名前のようだ」といったつぶやきまであるとか▼民間も地方自治体も物心両面の支援に尽力していているが、その支援が本当に生きてくるのも国の牽引力が十二分発揮されてこそ。「国よ、しっかりしてくれ」すべての民の叫びである。
片隅抄