WBCのチェコ戦で先発した佐々木朗希の気迫あふれる投球にはしびれた。3月11日、佐々木少年は出身の岩手県陸前高田市で被災し、父親と祖父母を亡くした。13回忌の登板に強い思いがあったのは間違いない。「東北の誇りだ」と歓喜する、ふるさとの住民たちの表情が忘れられない▼翌日、宮城県仙台市では「復興応援試合」と銘打ったJ2〝東北ダービー〟が行われ、いわきFCが待望の今季初白星を飾った。殊勲弾を決めた江川慶城は試合終了のホイッスルが鳴るとピッチに倒れ、チームの勝利とプロ初ゴールに感極まり涙を流した▼スポーツから受ける感動はときに人の心を元気づける〝特効薬〟になる。一瞬でも辛いことを忘れさせてくれる。彼らのひたむきな姿は抄子をはじめ、多くの被災者の胸を打ったはずだ▼WBCチェコ戦。4回に佐々木が死球を与えたときの誠実な対応も印象的だった。友好のエール交換然り、真のスポーツマンシップに心震えた。