原発処理水の海洋放出が始まった直後、その様子を取材する機会を得た。処理水が海水で希釈される設備などを確認した中で、担当者は「世の中の皆さまに安心してもらうことで、信頼を積み重ねていきたい」と強調していた▼海洋放出は2日から、本年度の3回目が進められている。8月の初回決定時には世間の大きな関心事となったが、いまでは中国の禁輸措置を巡る政治的な問題となっており、放出自体に問題は起きていない。市が独自に発表した海洋モニタリングからも理解できた▼ただ東電の姿勢に不安がないわけではない。10月25日には汚染水を浄化するALPSで、作業員が被ばくする事故が起きたが、説明が二転三転する経緯をたどった。海洋放出とは関係ない内容とはいえ、「またか」という感情はぬぐい切れない▼どうしてもネガティブな情報は先行する。せっかく廃炉の完遂のため、海洋放出が滞りなくできたとしても、他の部分で不信感を招いてはならない。