落語を楽しむには想像力が必要となる。大道具や照明も使わず、一人の噺家が繰り出す話芸を通じて、聞き手はその世界にいざなわれる。「皆まで言うな」。すべてが説明されるわけでない▼きのう市から、1通の投げ込みがあった。開会中の市議会12月定例会で、記者の携帯電話が鳴ったという。取材の際は電源を切るか、マナーモードの設定を確認するようにと。該当した旧知の記者はしきりに反省していたが、わざわざ投げ込みという貴重なリソースを使ってまで、発信する必要があったか疑問だ▼公共の場で、携帯電話の音が鳴らないよう求めるのは至極当然。ただ人間誰でもミスはある。議事を止めたわけでもない。何度も繰り返すのならば問題だが、今回のケースは本人にひとこと注意を促せばよい▼そもそも市議会の取材に来る社は限られている。せっかく取材している先の些末な過ちを、ことさら強調するのはいかがか。落語ならば無粋と言えよう。
片隅抄