「山林から大量の煙が出ています。山火事じゃないですか」。消防車が駆け付けたところ、どこにも煙は見えず。遠くから見ると、スギ山全体が雲がかったようにぼんやりと▼春霞なら風情もあっただろうが、さにあらず。勘の良い読者諸兄姉ならお分かりだろう。ここ数年で抄子も随分と症状が進み悩みの種となっている〝ソレ〟。考えただけでも鼻がムズムズ、のどはイガイガ、目はシパシパとしてくる。冒頭の小噺(ばなし)のようなやり取りの真偽は定かではないが、スギ山の多いいわき市では決して大げさな話ではない▼民間の独自試算によると、ソレの大量飛散の影響による経済損失は約3800億円にも上る。外出が減ったことで、外食やレジャー分野で消費が落ち込んだとか▼今季は例年に比べ、飛び始める時期が早まっているという。抄子の車にもパウダー状の黄色いソレが付いているのを15日に確認した。メガネとマスクが手放せない季節がやってきた。
片隅抄