あす、2004(平成16)年以来20年ぶりに新紙幣が発行される。細菌学者で黄熱病の研究に尽力した、猪苗代町出身の野口英世博士との別れは寂しさを感じるが、英世と師弟関係にある北里柴三郎が新千円札のデザインに採用されたとあれば、県民としては胸のすく思いだ▼いわき市としては、渋沢栄一が1万円札の新顔となったことも大きなニュースだ。幕末の志士から「近代日本経済の父」と呼ばれる実業家に成長した栄一は生涯、約500もの企業に関わったとされるが、その一つが常磐炭鉱の前身たる磐城炭礦社▼栄一は自身を師に仰ぎ、自由民権運動家の河野広中と親交のあった実業家で政治家、小川ゆかりの白井遠平らと常磐線の開業にも心血を注いでおり、いまのいわき、浜通りの発展は栄一抜きには語れない▼蛙の詩人草野心平の実の祖父は白井遠平。父・馨が伯父の養子となり、草野家を継いだ。弊紙で連載を担当している関内幸介氏の高祖父でもある。
片隅抄