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いわき市消防本部・新妻拓弥さん 防災力向上に団体設立 震災での体験胸に
東日本大震災の被災体験をきっかけに、災害で困っている人の役に立ちたいと、JA職員から消防士に転職した市消防本部消防士長の新妻拓弥さん(33)が、県内の防災力向上を目指してボランティア団体を立ち上げた。
10月28日に設立した、全国組織の技術系災害ボランティアネットワーク「DRT JAPAN 福島」。消防士を中心に防災に関する専門知識がある十数人からスタートし、県内の各種団体と連携しながら災害への備えや被災地での自助、共助意識の醸成を図る。
社会人2年目だった2011(平成23)年3月11日。永崎地区の実家を津波が襲来、流れてきた車に破壊され、大規模半壊で取り壊しになった。家族は無事だったが、幼少のころから世話になっていた地区民らが犠牲になった。
先が見えない日々の中、駆けつけた消防や自衛隊、ボランティアの助けを受けた。「大変ですが、今だけです。頑張りましょう」との言葉に背中を押され、地元でより人助けができる業種を目指すべきだと決意した。
消防士となり、令和元年東日本台風や、2023年9月にいわきで初めて発生した線状降水帯での大雨被害の現場を体験。災害支援で訪れたさまざまな団体と連携する中、公務として活動できる災害の予防や発生時の救助以外の、ボランティアが担う重要な役割に気付いたという。
生活を再建するための復旧・復興に関する支援で、災害関連死の減少にも直結する。これまでの具体的な活動として、能登半島地震の災害支援時には被災した住民の貴重品や車両を取り出すために倒壊した住宅を重機で部分的に解体したり、水害時には周辺環境に沈殿した泥の撤去作業などに取り組んだ。
団体では今後、各地の被災地で得た知見や教訓を地元に還元し、一般人でも扱える資機材による支援の方法について講習会などを通じて周知したい考え。新妻さんは「ボランティア活動に興味がある人は一度、連絡してほしい」と呼び掛けている。
(写真:「DRT JAPAN 福島」を立ち上げた新妻さん)