亡くなった元横綱で大相撲解説者北の富士さんの異名はいくつかある。本人に耳が痛いものでは不調で11勝4敗が4場所続いたことから「イレブン横綱」があるが、「プレイボーイ横綱」「現代っ子横綱」と呼ばれた力士は他にいない▼昭和45、6年の小中学生のころ見ていたライバル玉の海との北玉時代全盛期に大相撲に夢中になったが、あの双葉山の再来と期待されながら27歳で急逝した「悲劇の横綱」玉の海と対称的な強さと脆さの両面をもった北の富士が好きだった▼現役のころはビルが建つほど遊んだそうだ。でなければ、スーツでも和服でも軽装の革ジャンや浴衣でも、あれほど小粋に着こなせる〝華〟を醸し出せる若々しいご老体でいられない。そしてユーモアを交えながらの現役力士への手厳しい苦言と励まし! 文字通り、斜に構えた姿勢で上目遣いが不快な石破首相に足りないのは華だ。腹蔵ありげな語り口調もそう。周囲の人を引きつける華がなくては……。