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「年賀状じまい」いわき市でも 湯本活版所・藤本さん 寂しさにじませる
今年も残すところ9日。新年のあいさつに欠かせないのは年賀状だが、ここ数年は「年賀状じまい」をする個人・企業が増えている。日本郵便によると、2025年向け年賀はがきの当初発行枚数は、全国で10億7千万枚と14年連続で減少。さらに今年10月から、はがきが1枚63円から85円へと値上げされ、需要はより減る見込みだ。こうした動きは、市内の印刷業者にも大きな影響を与えている。
「昭和時代は10月から12月にかけて、個人・企業含め1千件の受注があったよ」。湯本活版所(常磐湯本町)の代表取締役・藤本孝典さん(80)はこう振り返る。
藤本さんはこの道56年のベテランで、本年度の市技能功労者表彰を受けている。印刷工として他社に先駆けて関連する設備を導入し、最新の技術を駆使して技術の向上を図り、高品質な印刷サービスを提供してきた。
フォーム印刷やカラー印刷などの新しい設備をいち早く取り入れ、多様なニーズに応えるため、新しい分野への挑戦を続けている。これまで返品やトラブルは1度もない上、業界団体の役員として後進の育成に務めている点がたたえられた。
藤本さんによると、年賀状離れを感じるようになったのは2022(令和4)年。年賀状を今回限りでやめるという文言が目立つようになったという。さらに23年には本格的に「年賀状じまい」を伝える印刷が増えた。
全国的に企業による「年賀状じまい」が増加している。帝国データバンクの調査によると、6~10日に1339社からアンケートを取ったところ、既に年賀状を送っていない企業は49・4%とおよそ半数を占めた。
「年賀状は新年を祝うだけでなく、相手に心を込めて準備して届けるという大切なもの。年賀状の心が失われてしまうのは……」。時代の流れとはいえ、藤本さんは寂しさをにじませる。湯本活版所には例年、25日まで駆け込みで申し込むこともあり、今年も同日までデータ持ち込みで受け付けている。
(写真:年賀状の印刷を行っている湯本活版所)