県による無人航空機(ドローン)を使った物流配送の公開実証が14日、いわき市で行われた。ドローンメーカー「イームズロボティクス」(南相馬市)の県産ドローンを活用し、立ち入り管理措置を撤廃した目視外飛行「レベル3・5」の条件下、平時と有事の想定で物資を運ぶ実証実験に取り組んだ。
物資を運ぶに当たっては、いわき市や茨城県でスーパーマーケットを展開する「マルト」が協力し、勿来町窪田の本部から、五浦庭園カントリークラブまでの約3・5kmを飛行。有事のパターンでは衛星電話を先に届けてニーズを把握し、医薬品を含むマルトグループの商品を送った。
ドローンを使った配送は、実用化に向けた動きが加速している。福島県は昨年6月、国家戦略特別区域諮問会議で「地域課題解決連携特区(連携絆特区)」に指定され、規制の緩和につながることが期待されている。
特に東日本大震災・東京電力福島第一原発事故からの復興を目指し、新産業の集積に当たる「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」によって、県内でドローンに参入する企業も増えており、社会実装に向けた取り組みが行われている。
イームズロボティクスは、昨年の元日に起きた能登半島地震でも活躍した。地震発生から4日後に現地に入り、自社のドローンを飛ばしたほか、全国から駆け付けた20あまりの事業者を統括し、地形の変化や孤立集落の状況を調査した。
曽谷英司代表取締役社長は「能登半島地震ではインフラの途絶や、低温や大雪という環境下で、被災者が何を求めているかをいち早く知ることが課題となった。震災・原発事故をきっかけに参入したこともあり、災害時に威力を発揮することを求めていきたい」と話す。
公開実証に協力するマルトとしても、震災・原発事故の際、店舗を開け続けて市民生活を守った自負がある。「幸せを創造する企業づくり」を経営理念に掲げており、安島浩代表取締役社長は「現在も移動販売を行っているが、ドローンで困っているお客さまのもとに出向くことで、助けとなる」と述べる。
一方でまだまだ法律の壁もある。医薬品をドローンで配送するには制限があり、実証実験を通じ、より柔軟な対応が図られることを要請していく。くすりのマルトの安島力代表取締役社長は「ドラッグストア・調剤薬局を持つ利点を生かし、これまで以上に災害時にお役に立ちたい」と語る。
マルト本部を飛び立ったドローンは10分あまりで、五浦庭園カントリークラブのアプローチ練習場に無事降り立った。県では田村市、南会津町でも実証実験を予定しており、さまざまな条件で試験していく。
(写真1枚目:ドローンを囲む関係者 2枚目:有事を想定した訓練=五浦庭園カントリークラブ)