大人が泣いている姿を目の当たりにすることは滅多にないし、日常で泣くというときは身近な人が亡くなったり、上司に叱られたり、重病を告知されたりと辛い涙が多い▼高校野球を取材していると、しばしば涙を見ることがある。選手はもちろんだが、監督やスタンドで見守る家族も泣いている。劇的なサヨナラ試合、負け続けていたチームの奇跡的な勝利、大差がついて敗れても最後まで頑張ったわが子へのねぎらい……。球場で見る涙はほほえましい▼スポーツは『筋書きのないドラマ』といわれる。高校野球だけでなく五輪やＷ杯、プロのＷＢＣなどで、下手なドラマより感動的なシーンを見ることができる。ここでもみんな悲しみや苦しみではない開放的な涙を見るのである▼政治家たちの『茶番劇』も近ごろのドラマよりよほど面白い。総理大臣の迷走ぶり、与野党の足の引っ張り合い、頭がおかしいんじゃないかと思うような脇役もいる。これは喜劇？ 悲劇？
