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マルハニチロ 世界初の水槽内でのサンマ養殖に成功 アクアマリンふくしまと共創
総合食品企業のマルハニチロ(本社・東京都江東区、池見賢代表取締役社長)は、世界初となる水槽内でのサンマ繁殖を成功させた、ふくしま海洋科学館「アクアマリンふくしま」と共創し、世界に先駆けてサンマの事業化レベルでの試験養殖に成功した。
サンマはウロコがはがれやすく網での採集ができない上、神経質なためにわずかな刺激で水槽の壁に衝突し死んでしまうことから、長期飼育は難しい。天然サンマは近年、水揚げ量が激減し市場価格も高騰しているだけに、実用化に向けて同社の取り組みは注目を集めそうだ。
全国さんま棒受網漁業協同組合(全さんま)の資料では、2010年の全体のサンマの水揚げ量は19万3425tだったが、近年は不漁や資源量の激減から低水準が続いており、24年は3万8695tとほぼ5分の1に。
市場価格も高騰傾向にあり、マルハニチロによると、卸売価格は08年には1kgあたり65円だったが、21年は621円と10倍近くとなり、高級魚になりつつある。
同社は20年、鹿児島県南さつま市に養殖技術開発センターを設立し、クロマグロやブリ、カンパチをはじめとする養殖魚の育種と種苗生産技術の向上に取り組むなか、アクアマリンふくしまと展示魚の収集などで交流を重ねてきた。
サンマの試験養殖は23年10月に試験的に卵の提供を受けたことをきっかけに始まり、卵のふ化に向けた温度管理や給餌などの飼育環境について、同館の知見を生かしながら互いに生態研究を進めてきた結果、昨年6月に市場への出荷目安となる100g超サイズの成長を成功させた。またその2カ月後には人工授精にも成功した。
サンマの飼育を担当しているアクアマリンふくしま学芸員の山内信弥さん(51)は、近年の不漁を背景に「サンマは養殖できないのか」との質問を繰り返し受けてきたことから、「ようやくその疑問に答えることができうれしい」。ホッと胸をなでおろすとともに、今回の革新的な出来事に対し「20年以上続けてきた研究が社会に貢献できて良かった」と喜んだ。
同社ではアクアマリンふくしまとの共創から始まった事業のため、県民、いわき市民に広く知ってほしいとの思いを抱いており、「1日も早く皆さまの食卓に新鮮なサンマを届けられるよう、取り組みを進めていきたい」とコメントを寄せた。
(写真:養殖技術開発センターの陸上水槽で試験飼育されているサンマ)