先日会った90歳近くの男性は、往時の戦友と今も年に数度定期的に会うという。「毎回楽しみに出掛けるが、顔を合わせればいつも同じ話ばかりになる」とのこと▼一緒にシベリアに抑留された仲で「あの時のつらさはいくら話しても尽きることはない」と言葉をかみ締めた。シベリア抑留は、ポツダム宣言受諾後の8月末に始まり、日本人捕虜約60万人が酷寒のシベリアで強制労働をさせられ、長い人では10年以上に及んだ▼戦争に関しては8月6、9日の原爆投下、15日の終戦は広く知られている。だがシベリア抑留については、60万人もが使役させられたにもかかわらず、原爆投下や終戦と同等の認識を持つ人はいかほどだろうか▼戦争による戦後のこの悲劇を、われわれはもっと知り、後世に伝えていく必要があると思う。終戦から67年、高齢となった体験者から話を聞く時間には限りがある。そうした人々の話に真しな思いで耳を傾けねばと感じた今日―敬老の日。