「僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る」、高村光太郎の詩「道程」の冒頭だ。中学の教科書にあった記憶を持つ人も少なからずいるだろう▼初出時には120行に及ぶ作品だったそうだが、最終的には、たった9行の短い詩として、今に伝わっている。偉大なる「自然」をよりどころに、前向きに生きていく決意が見て取れ、読む側を力づけてくれる作品でもある▼南相馬の小高商業高生が昨年、自分たちが開発した「だいこんかりんとう」を使い、風評被害の払しょくに挑んだ。その取り組みを紹介したテレビ番組を視聴したが、中に担当教諭のこんな話があった。「大人だと、経験を前提に二の足を踏んでしまうような挑戦であっても、生徒たちは〝まずやってみよう〟と躊躇なく前向きだった」▼そこにある「振り返る過去を持たぬ〝若さ〟の強さ」に感じ入り、「道程」が頭に浮かんだ。若い人々へ―若いゆえに開ける道がきっとある。それを信じて―今日、成人の日。
片隅抄