文芸書のベストセラーの中には、新聞小説だったものも少なくない。本紙連載の『手のひらを太陽に!』にも、そんな展開が期待できる。作者は企業買収の世界を描いた『ハゲタカ』で知られる真山仁。桐生タイムスや南信州、大分合同新聞など、各地の地域紙にも掲載中だ▼先週末までの内容だと「東京でクールに暮らす若者が、故郷の旧知から地域再生への協力を請われて、帰郷を決心した」ところだ。当初は、熱意に満ちた幼なじみに距離を感じていたようだが今後は、傾いてきた勤務先を辞め活動に入っていくのだろう▼地方の時代といわれ、全国あまたで活性化が叫ばれている今、この主人公のように、遠く離れて暮らす人間にとって「恋しさ半分うっとうしさ半分」、それが故郷というもののようだ▼読み手によっては、共感も反発も、あるいは自己投影もありそうなテーマだ。内容さながら、日本各地で誰がどんな思いで読んでいるかを考えてみたりもする。