人が得る情報の9割は目からといわれるが、鼻から入る情報も結構重要だ。料理のおいしさや花の美しさは「香り」あってこそだろう▼こんな例もある。阪神・淡路大震災の直後、知人が神戸でボランティア活動をした。帰郷後の感想は「焼け跡のにおいが一番つらかった。テレビで、あのにおいは伝わらない」。どんなに情報機器が発達しても、現場や実物でないと分からないことがあるということだ▼先週末にⅰPadが発売され「電子書籍時代の到来」などと注目を浴びている。一方で、電子書籍ではインクや紙のにおい、感触が楽しめず寂しいという声も聞かれ、文化とはこういうものかと実感した▼においの伝達はさておいても、ふと、ⅰPadの全面タッチスクリーンの平らな画面に、これだと視覚障害者に不便では、と疑問を持った。ユニバーサルデザイン時代の今、期待の機器に、得たい情報の1割しか得られない人々にも優しい、さらなる開発を望みたい。