「泣くに泣けない現代人が泣ける場を探している」という。最近、「涙活」なる言葉を耳にするようになった。感動し思い切り涙を流すことでストレスが解消するそうだ▼ただ、悲しみや悔しさなど、自らのストレスで流す涙には、その効果はないという。「涙活」は泣くための感動映像の上映や人情話などを展開するもので、3月には市内でもセミナーが開かれる▼民俗学者柳田国男は「泣くことは言葉と同じ、人間の1つの表現手段」と言った。それが「人前で涙を見せてはいけない」という社会規範によって抑制されているのが現代だろうか。それゆえ堂々と泣いてよい場が求められているのか▼「気持ちのまま素直に泣きたい」「涙を流してスッキリした」という声を聞くことがある。また往年の青春ドラマのテーマ曲には「涙は心の汗」の歌詞があった。こらえきれずに流れ出る涙を抑える一方で、快感を求め泣きたがる「人」とは、何と不思議な生き物ではなかろうか。