春を告げるフキノトウが芽吹き終わると、山はタラノメやウド、ワラビ、ゼンマイ、シドケ、フキなどが、先を競って短い旬の季節を迎える。「たらの芽のとげだらけでも喰らひけり」という一茶の句ではないが、山菜は、あの独特の味で春の喜びを感じさせてくれる▼スーパーなどには早くから数種の山菜が並び、インターネットでも直接産地から取り寄せできる時代だが、山菜は、自ら山に入って自然に触れ、その手で採取してこそ魅力が倍加するもの▼ただ、山に入るにしても山菜を採るにしても、常識的なルールは守りたい。それは入る山に合わせた安全のための用意であり、食中毒を防ぐための毒草の知識であり、山菜を絶やさないための採り方の知識だ▼山歩きをして残念に思うのは、感覚を疑うようなごみの投げ捨てと、無残に荒らされた採取の跡。神様からの授かりものに感謝して、自然を汚すことのないよう、これからの季節を健康的に楽しんでほしい。