観光庁がツアー登山を扱う旅行会社に実施したアンケートで、3分の1が明確な危険回避の判断基準を持っていなかったことを受け、マニュアルの作成を業界団体に要請したという▼アンケートは、北海道大雪山系で昨年7月、合計10人が死亡した大規模遭難のうち、8人が縦走ツアーのパーティーだったことを受けてのものだ。ツアー登山での事故は決して少なくない。その度に計画に無理はなかったか、ガイドの判断はどうだったのかが問われる▼山岳風景は魅力的だ。中高年の登山者も着実に増えている。ツアーであれば観光気分の参加者も多いだろう。それだけに命を預かる旅行会社の責任は重いが、自己責任が原則の登山では、参加者の備えも欠かせない▼さして高山のない県内でさえ、登山での死者は出ている。遭難の危険とは常に隣り合わせなのだ。間もなく本格的な夏山シーズン。自然を侮らず、山の知識を持ち、十分な準備をして楽しんでほしいものだ。
片隅抄