昭和40年代前半を小学生として過ごした抄子の同級生たちにとって、川は格好の遊び場だった。ことに夏は天然のプールでもあったのだ▼川で経験したことはたくさんある。まず誰に教わることなく泳ぎが上手になった。素潜りもする。高いところから淵に飛び込む勇気も身についた。そこには川魚がいるから自分でヤスを作って刺したり、網ですくってとった▼しかし、いちいち大人が監視しているわけではないから危険もある。現に、泳ぎが得意だった下級生が潜ったままおぼれ死んだ。どうすれば危ないのかを身をもって体験した時代でもあった▼今、川は汚れ、河川敷も雑草で覆い尽くされて、とても子供が入れたものではない。親も「危ないから近寄らないで!」と引き止める。こうして人と川はだんだん疎遠な関係になっていく。安全第一に設計された人工の川で、あらかじめ大人たちが用意した魚を取る。さて、そこから子供たちはいったい何を学ぶのだろう。
片隅抄