「パンがなければお菓子を食べればいいのに」――仏革命前夜、食糧難を訴える民衆に対し、王妃マリーアントワネットが放った言葉とされるが、これと同じズレを現代日本の為政者に感じる時がある▼少し前だと、金賢姫元死刑囚来日の際の中井国家公安委員長の発言。問題にもなった東京上空の「遊覧」飛行について、「彼女はもう2度と海外に出られないかもしれない。なので日本を見せてやりたい気持ちはあった」という趣旨のことを言っていた▼海外遊説など当たり前の政治家にとって飛行機は、1つの交通手段にすぎないのだろう。しかし庶民は知っている。身の回りには、一生に1度も飛行機に乗る機会などなく、まして外国旅行など夢でしかない人が結構いることを…▼金元死刑囚への「思いやり」の前に一般市民の生活を知ること、それが政治の原点ではないのか。党代表選の駆け引きばかりが目に付く政治家は、国民の声を聞いているのか、今問いたい。
片隅抄