「絶滅危ぐ」といっても、何も動植物だけではない。文化や風習などの伝統――狭義にとらえれば各家庭に伝えられてきた年中行事もそうかもしれない。そんな身近な文化が絶滅の危機に瀕しているという▼20日、わが家では母が嫁に来たとき祖母から引き継いだ「恵比寿講」が行われた。派手なことは何もない。紅白の座布団に恵比寿、大黒様の像を置いて、そこへお神酒や煮しめ、シジミやメダカなどを入れた大きな器、財布を入れた升を供えて家内繁盛を祈る▼昔から何気なく見てきた恵比寿講が、実は少しずつ途絶え始めているということを、えびすこう奉賛会事務局の方たちから聞いた。いわき地域学會相談役の山名隆弘さんからは「これからも大事に続けていくように」と励まされた▼来月21日、そんな失われつつある恵比寿講を広く市民に披露する行事が行われる。身の回りの小さな文化が知らないうちになくなる現実を、もっと真剣に受け止めねばならない。